三国志と五国志の比較


 この物語はフィクションですので正史との比較を行っております。正史をご存じないかたは読む必要はございません。私はまず歴史を変える事にしました。私の知識から言うと凄い作家はどれだけ歴史に沿って違う話を書き、歴史の一説とするかが勝負です。しかし浅学な私はそれを楽しむほどの知識がなく、しかたなくそう決定しました。
 歴史を変えるならばやはりどこかの大戦で逆が勝たなければなりません。三国志の中で大戦といえば五つほど見受けられます。『正史三国志のあらすじ』内で挙げた『官渡の戦い』、『赤壁の戦い』、『樊城の戦い』、『彝陵の戦い』、『五丈原の戦い』の五つです。私はこの中で『官渡の戦い』を選びました。
 『官渡の戦い』の話は最後にするとして、まず、『赤壁の戦い』で曹操が勝つと曹操がそのまま天下を統一して終わります。しかしそれでは物語がストレ−トすぎます。
 物語の流れの順番に説明するとすると次は『樊城の戦い』です。この戦いで劉備の義弟関羽が魏の名将曹仁の守る樊城を陥落させると、許昌を陥として魏を追いつめるでしょう。これは実に面白いのですがこのアイディア、『破三国志』で実行されています。
 次に『彝陵の戦い』です。この戦いに蜀が勝つとおそらく呉はそのまま滅ぼされ、蜀と魏の一騎打ちとなります。これも面白いです。二国の国力もかなり近くなるし。それにどのようにスト−リ−を作ったとしても最終的には二国の一騎打ちとなるのだからこれが一番理想的な形です。しかし、三国志小説には諸葛孔明が絶対であるという暗黙の了解があります。つまり魏と互角の兵力を持った諸葛孔明率いる蜀が司馬仲達の守る魏に負けるはずもなく、じわじわ魏を滅ぼして行くだけですからおそらく読んでいる途中で嫌になるでしょう。正直私はあまり諸葛孔明を書きたくないのです。蜀が勝ちすぎる話は私自身、反三国志で嫌になったので避けます。ちなみに我が師・紀玉氏の『天と地の間に』はその筋で蜀が統一した後の話です。(私の小説とつなごうと交渉中。)
 次に『五丈原の戦い』で蜀が勝ったとするとおそらく蜀は長安や洛陽を落とし、魏を滅ぼすでしょう。蜀が完全に魏の領土を全部取ったとすると残った呉との力の差が有りすぎて面白くなくなるでしょう。ところが魏が蜀に滅ぼされかけているのに乗じて呉が魏の東側に侵攻したらどうなるでしょう。おそらく洛陽辺りを境界として天下は蜀と呉に別れるでしょう。しかしやはり諸葛亮がじわじわと呉を滅ぼすでしょう。しかし歴史ではこのころすでに諸葛亮は死んでいます。ですからこの場合、陸遜はすぐ死ぬ運命にありますので姜維対諸葛格となり、面白くなります。それにまるで正史の魏での曹爽と司馬懿のような陸抗と諸葛格の権力争いも面白いかもしれません。しかしこのアイディア、『大三国志』で実行されたッポイです。
 私の理想は最終的には二つになるが、ほぼ互角の力を持った国が複数存在することです。そこで私は『官渡の戦い』を選ぶことにしました。『官渡の戦い』で袁紹が勝てば袁紹が一つの勢力として残るわけです。そして孫策率いる呉に少し領土を広げさせます。それでも魏がまだ強いようなので北西部にもう一つの勢力を侵攻させます。しかしそれが馬騰の子・馬超だと劉備と馬騰が親交があったことから、『反三国志』のように馬超は劉備と手を結んでしまいます。そこで今回は張魯を使うことにしました。
 この物語の主人公は劉備の孫・劉甚です。かれは正史において蜀が滅ぶとき、一人徹底抗戦を主張し、聞き入れられず国が滅びるのを嘆いて劉備の廟の前で自害した人物です。私が彼を主人公にしたのは彼に自らの力で蜀を守ってほしかったからです。


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